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    「裏目」①

     微睡みの縁から現実に戻りかけたとき、花菜子は思わず腕を伸ばそうとした。しかし、身体は思うように動かない。
    (な、何なのよ、これ)
     腕は腰骨の上あたりで重ねて固定されている。
    (強盗? それとも誘拐された?)
     しかし、半ば霞んだままの瞳に映るのは、サイドボードの上に置かれた40型のやや大型の液晶テレビ、その横に鎮座するミニコンポと数百枚に上るCDやDVDを収めたラックなどだ。テーブルの上に並んでいた料理の皿は全て片付けられ、陶器製のビアグラスが2人分残されているだけだった。意識を失う前に見ていた光景とほとんど変わらなかった。
    (勘弁してちょうだい、冗談にしても酷すぎるわ……)
    「こんな機会を冗談で終わらせるほど、おれは草食じゃないぜ」
     頭の上から井村の低い声が降りかかってきた。心の中でかれに毒づいたつもりが、あまりの怒りに言葉は舌に載って放出されていたらしい。
    「何でこんなことするの? 今すぐ帰して。帰してよっ!」
     不安に駆られて花菜子は叫んだ。意識がハッキリしてくると、自らの置かれた状況が呑み込めてきた。先ほどまで井村とともにビールを口にしていたソファに依然寄りかかっているが、花菜子は後ろ手に縛り上げられていた。グレーの半袖カットソーと黒の膝丈スカートは、まだ脱がされていなかった。しかし、Cカップの乳房の上下に4重ずつに重ねられた縄が掛かっている。首の両側から回された縄が胸の谷間に下りて胸の上下の縄を絞り上げている。全く身動きのできない状態だ。
    「ふふふ、1日奴隷になるって、こういう意味だと分からなかったのか? 国語の先生のくせに、随分と鈍いな」
    「いやあっ」
     不自由な上半身を左右に振り立てながら、自由なままの両脚をバタつかせ、何とか花菜子はソファから立ち上がった。そのとき、井村は花菜子の両肩をガッチリと掴み、壁際に引きずっていった。背中の縄に足した新たな縄の端を、天井に走る鉄製の太いレールに引っ掛け、固定する。これで、花菜子は立ったままの姿で拘束されてしまった。
    「さあて、中崎花菜子先生の囚われの姿を鑑賞させていただこうか」
     井村はフローリングの床に腰掛け、パイントグラスに缶入りのギネスを注ぎながら嗤った。
    「奴隷だなんて……。きょうのために料理を作ってあげたじゃない。それだけの約束だったはずよ」
    「これから、その料理へのお礼ってやつをさせていただきたいと思いましてな」
     井村と花菜子は池袋から私鉄で数駅離れた街の同じバーの客だった。井村は付近に住むアラフォー男で、職業は音楽関係のライターだという。花菜子は駅の近くにある学習塾で中学生の国語講師を務めている。年齢は20代後半らしい。お互い夜が遅い職業の上、日本語を扱う仕事をしていることから、何となく言葉を交わすようになった。
    「わたしが寝ている間にこんな汚い真似をして! 何がお礼よ」
    「おれの取った手段は、確かに褒められたもんじゃなかったかも知れないがね。それを補ってあまりあるだけのお楽しみを提供するんだから、おあいこになるぜ」
     この日、花菜子が井村の部屋に来たのは、バーで行った賭けに負けたためだった。先日まで行われていたロンドン五輪で、男子サッカーがメダルを獲るかどうかを熱心に話し合っていた。井村はメダルなし、花菜子は銀メダルを予想して議論は白熱しながら双方とも譲らず、結果について賭けをすることになった。休日はJリーグの試合を観に行くなど、サッカーに多少は詳しいつもりの花菜子だったが、賭けは裏目に出た。敗者は勝者の「1日奴隷」となることに決まっていたのだ。井村は「インド料理店のものより美味しいと言われる」という花菜子自慢の南インド風チキンカレーを、かれの自宅で作ることをリクエストした。中年に差し掛かった男の単身世帯に足を踏み入れることに抵抗はあったが、井村の部屋は山手通りに面したマンションの1階で、エントランスに近かった。何か不測の事態が起きても逃げやすく、自分より数センチだけ背が高い170センチ程度で細身の井村なら、そう乱暴なこともしないと踏んでいたのだ。
    「なのに、縛ったりしなくったって……」
    「優しく抱いてもらえるとでも思っていたのかい?」
     揶揄するような井村の口調に、花菜子は唇を噛んだ。カレーのほか、何品かこしらえた料理を摘まみつつ呑んでいるうちに、井村とならベッドに誘われても拒めないと思い始めていた。
    「中崎先生は、彼氏とこんなのを使ったりしてるのかな?」
     井村は七分丈ズボンのポケットからピンクローターを取り出し、花菜子の眼前に突きつけた。
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