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    「疑い」①

     今日店に来た二十代後半のイケメン客のことを話題にしながら更衣室を出たところ、水谷美緒は柳生利夫に呼び止められた。
    「あ、上がったばかりで悪いんだけど、水谷さん、ちょっと残ってくれる?」
     今さっきまでホールで働いていたダイニングバーのオーナーが、この柳生だ。男性にしては小柄だが、客商売の如才なさと同時に渋い魅力をも漂わせた男だ。おしゃべりに興じながら一緒に帰ろうとした先輩の井口友佳里と顔を見合わせた後、美緒は言った。
    「あのぉ、あたし、終電に間に合わないかもしれないんですよ」
    「大丈夫、大丈夫。もし電車逃したら、タクシー代払うからさ。すぐ済むから協力してよ」
     柳生は手刀を切った。友佳里は声を出さず口の動きだけで「じゃ、お先に」と告げると、小さく手を振って先に姿を消した。
    「分かりました。すぐ終わるんですね?」
     渋々といった口調で柳生に念を押すと、美緒はその後ろに付いていった。正直なところ、池袋から電車で二十分ほどのワンルームマンションにタクシーで帰れるなら、その方が有難いとも思えた。事務室に入ると、簡易応接セットのソファにチャコールグレーのスーツを着込んだ体格のよい男が腰掛けていた。隣には大きめのアタッシェケースが置かれている。四十代半ばの柳生と同年代だろうか。目付きの鋭さに思わずたじろいだ。
    「まあまあ、そこに座って」
     隣に立っている柳生に促され、美緒は仕方なくソファに腰を下ろした。前面にリボンをあしらったブラウスにロングスカート。毛先を軽く巻いたミディアムの髪の毛がふんわりと浮いた。
    「実はね、水谷さん。昨日、店の中で現金十万円入りの札入れをなくしたというお客様がいらっしゃってね。一応、アルバイト全員に話を聞かせてもらっているんだ。この方はね、伊丹さんとおっしゃるんだ」
     伊丹と紹介された男がスーツの内ポケットから黒革の手帳を見せた。
    「け、警察……ですか?」
     心臓の鼓動が高まった。
    「正直に話してくれれば、すぐに済みますよ」
     低い声で伊丹は続けた。
    「あなたはこのお店のアルバイトに入って半年ですね? R女子大学の四年生で、もう就職も決まっていらっしゃって、半年後の卒業式を待つばかりだと」
    「はい……」
     他にも出身地やら家族構成など、事件とは無関係のことばかり聴かれる。怯えよりも不愉快さが先に立ってきた。美緒はタクシーで帰れるからと柳生の言葉に従ったことを後悔し始めていた。
    「あのぉ……。お財布がなくなったことは、いいんですか? もう遅いし、帰りたいんですけど」
    「まあまあ、伊丹さんの質問に全部答えてくれよ。タクシーで送るって言ったじゃないか」
    「それは失礼しました、水谷さん。わたしが聴きたいのは一つ。札入れの行方を、あなたがご存じじゃないかということですよ」
     美緒は思わず美しい眉を上げた。
    「そんなことしませんよ。何であたしが疑われるんですか? 第一、昨日は休みですよ」
    「それなら、あなたのバッグの中身を改めさせていただきたいのですが」
    「嫌です」
     美緒は自らの横に置いたトートバッグの取っ手を引き寄せた。
    「すぐ済みますから、ね?」
    「強情を張るなら、仕方ないな、水谷さん」
     柳生が背後から美緒に抱きつき、右手を背中にねじ上げた。その隙に伊丹がバッグを取り上げ、中を探り始めた。
    「止めてくださいっ。何てことを!」
     美緒は身体を捩って抵抗したが、押さえ付けられた右腕と肘が痛むばかりだった。その間に伊丹がバッグの底に手を突っ込んだ。
    「おや、何かな、これは?」
     伊丹の手にはメガバンクの行名がプリントされた封筒がある。その中身を取り出すと、一万円札が複数あった。
    「ふうむ、ちょうど十枚ありますねえ」
    「水谷さん、とんでもないことをしてくれたねえ」
    「あたし、こんなの知りません! 友佳里さんに聴けば分かりますから」
     大きな目に涙を溜めて美緒は叫んだ。
    「井口さんに聴く前に、君から事情を聴かねばな」
    「離してっ! 痛いっ!」
    「暴れるから痛いんですよ」
     伊丹がアタッシェケースから取り出したのは、茶色い縄だった。両手首が柳生によって背中で重ねられる。
    「何するのっ?」
    「大人しくしていれば、こんな目に遭わずに済んだんですがねえ」
     柳生が素早く美緒の背後に回った。重ねられた手首が拘束されるのが分かる。
    「いやっ、何もしてないのに。こんなことしてっ」
     手首を縛られたかと思うと、縄は乳房の上に掛け回される。二つ重ねになった縄が胸の上を二周し、背中側で留められたらしい。
    「これでもう動けないはずですよ、お嬢さん」
     ピンと張った縄尻を握りながら、伊丹は美緒に声を掛けた。身体を捩っても、拘束した手首を縄から抜けさせるのは難しそうだった。美緒は口惜しげに背後の柳生を睨んだ。不敵な笑顔が鼻に付く。
    「伊丹さんにそんな目を向けちゃダメだよ。不利になるのは君の方だよ」
     柳生は美緒の顎をつまみ、顔を前に向けさせた。顔を振ってその手から逃れた。すると、柳生は顎の下に七十センチほどの赤い棒をこじ入れてきた。屈辱に顔を歪ませていると、縄が乳房の下をも固めてきた。脇の下を通る縄で胸の上下の縄を締められ、首の両側を通る縄が乳房の真ん中を絞り上げる。Cカップの乳房がワンサイズ大きくなったような気がした。
    「尋問されるのに相応しい姿になったね」
     柳生が美緒の縄付き姿を見て卑しげな笑みを見せた。こんな表情をする男だとは知らなかった。身体をいくら捻っても、手首を動かしてみても、二の腕と乳房に喰い込んだ縄目は解けそうにない。それどころか、却って縄がきつくなってくる気もしてきた。
    「お嬢さん、縄目の恥って言葉ご存じですか? あなたみたいに悪いことをして捕縛されることを恥ずかしいと思う気持ちですよ。こんな屈辱から逃れたかったら、早く正直になることですね」
    「だ、だって……」
     涙顔を俯けながら、美緒はなおも身体を捩った。乳房に甘い感覚が走る。
    ――何でこんなときに――
     ブラジャーの裏地に充血した乳首が擦れる感覚――美緒は刺激に弱い自分の身体を密かに呪った。
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