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    繋留

    「お客さん、困りますよ。あんなことなさっては……」
     ガラス製のお猪口に注がれた純米酒を口に含み始めた途端、はっぴ姿の男が困惑顔でやって来た。年のころ30くらい、眼鏡を掛けた頼りなさげな風情のくせに、名札には「店長」と刻まれていた。
    「困ったって何が?」
    「とにかく、こちらにお越しください」
     平日の午後3時。都内でも有数の学生街近くで、昼から営業しているこの居酒屋だが、客はわたし一人しかいなかった。せっかく貸し切り気分で気兼ねなく呑んでいたのに。わたしは立ち上がり、渋々男の後をついていった。
     店の入り口を出たところ、近くの名門私立大学に前の狭い道路には10人ほどの若者らが集まっていた。ある者は薄ら笑いを浮かべ、ある者は興味深げな表情を隠さない。唯一の若い女だけが痛ましげな顔をしている。アルバイトのアジア系外国人の女が店長の姿を認めると、次いでわたしを睨んできた。
    「警察が来たらどうするんですか?」
     店長の声は難詰するような調子に変わっていた。
    「何が問題だね?」
    「あれが馬だとでもおっしゃるんですか?」
     店長が指差した先には、高手小手に縛り上げられ、灰色の古ぼけた木製の看板に繋がれた美奈が身体をくねらせていた。清楚なライトブルーのブラウスに紺のタイトスカート姿がよく似合っている。珍しくポニーテールに纏めた髪型もなかなか悪くない。秘書に雇って3ヵ月の24歳だが、おっとりしていながらよく気の付く女だ。
    「そいつはこの娘に訊いてみれはいい」
     わたしは美奈に近づき、顎をつまんで顔を店長の方に向けた。美奈は顔を左右に振って抵抗しながら、声にならない呻きを漏らした。愛らしい唇は、真ん中に瘤を作った手拭いに割られている。猿轡を噛まされていては、言葉など発しようがない。
    「そんな状態じゃ、口なんか利けないでしょう」
    「人間の言葉が喋れないんだから、馬とさして変わらんさ。ここなんか正に馬の尻尾だよ」
     わたしは美奈のポニーテールを撫でながら言った。
    「それに、ここにはこう書いてあるじゃないか」
     わたしが手を掛けた看板には、「馬でお越しのお客様は、ここにお繋ぎください」と筆文字で記されていた。
    「ふざけないでくださいよ。この人を看板から解いて帰ってください。お代は結構ですから」
    「困ったな、君はこいつが単なる牝馬だって認めようとしないのか」
     わたしはワイシャツの胸ポケットから小さなリモコンスイッチを取り出しながら、呼びかけた。
    「この居酒屋の店長は、こいつが馬だって認めようとしません。しかし、鳴き声を聞けば、皆さんはこの牝馬が獣だとお分かりになるでしょう」
    「んん……むんっ」
     すると、美奈は眉根を寄せながら頭を反らせ、悶絶し始めた。スイッチを操作するにつれ、不自由な身体を捩りながら、額に汗を浮かべつつ、わたしの方を恨みがましい目で睨んできた。
    「いい声で泣くでしょう、この牝馬は? 今、こいつのどこやらにはリモコンローターを仕込んでるんですよ。それも敏感な蕾と穴の中に。あ、ブラジャーの中にもだな。ここは公道ですから、それをご覧に入れられないのが残念ですがね」
    「ひあああっ」
     恥ずかしい秘密を暴露された美奈が顔を振り立てた。口が利けない代わり、そうやって抗議の意を示しているのだろう。
    「すげえ……」
     いつの間にか増えた聴衆の間から感嘆の声が漏れた。
    「ほら、こうするとどうなるんだっけ?」
     わたしはスイッチを押して震動を最強にした。
    「んぐっ……ひぃっ……。ひ、ひ、ひふっ!」
     美奈の身体が徐々に痙攣し始めた。
    「まだだよ、こんなところで逝ったら恥ずかしいだろう?」
     わたしは美奈の敏感なところを襲っていた振動を止めた。
    「どうせなら、逝かせてやって下さいよ! こっちが生殺しだ」
     一番前の列で一連の様子を眺めていた若者が叫んだ。
    「確かにそうですね。それじゃ、続きを見たい人は、歌舞伎町に移動してもらいましょうか」
     わたしは有名なハプニングバーの名前を挙げた。
    「こいつが逝く前に、どこにどんな風にオモチャが入ってるか、じっくりご覧いただきます。その後、たっぷり逝かせてみましょう。次には、皆さん一人一回ずつ逝かせてもらいましょうか」
     歓声が上がった。
    「では、今から20分後にお店の方に集合してください。タクシー代と店の入場料は掛かりますが、決して損はしませんよ」
     絶頂を寸止めされただけでなく、ハプバーでさらに惨めな晒し者にされると知った美奈は、形の良い目に涙を浮かべてわたしを睨んでいた。店長とアルバイトの女は呆気に取られていた。
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